|
レース前日の夕方に新幹線でスタート地点である福山に入った。僕は先に福山入りしていた足立と一緒に駅前の福山ニューキャッスルホテルでの受付を済ませた。
福山は広島県の小さな街で、小高い丘の上には福山城がそびえる美しい街。そして、バラ園で有名らしい。さて、街の中には100キロマラソンランナーらしい格好の人たちが至る所にいて、明日のレースに備えていた。街の中をランニングしている人、食べ物を買っている人、どれもすごい鉄人ランナーに見える。僕たちのような"にわかランナー"とは違う。
僕たちも明日の朝飯となるバナナを買いにスーパーに入ったが、どこもバナナだけが売り切れ。こんなところで、バナナの買い占めが起こっているなんて・・、3件ほど歩き回って、何とかバナナを買うことが出来た。
足立と2人で食事を済ませると、ちょうど8時前。それは日韓ワールドカップ開幕戦、フランス対セネガルの試合が始まるところだった。本来であれば、充分な睡眠をとるために、そろそろ寝ないと行けない。サッカーにあまり感心のない足立は、「俺は寝るよ」とばかりに、耳栓とアイマスクをして、熟睡体制に入った。しかし、僕は結局最後まで見てしまった。それも優勝候補のフランスが負けるという悲劇的な試合を! エース・ジダンが欠場していたとは言え、絶対負けられない試合に、フランスは負けた。そして、絶対に勝てないだろうと思われていたセネガルが勝った。この試合が翌日の100キロマラソンの結果を暗示していたとは、その時点では知るよしもなかった。
 |
|
眠いけど、クリームを塗り込む
|
 |
|
左から、足立、Maru、僕
|
 |
|
ついにスタート
|
時間に超ルーズな男、Maruは勤務先の京都から最終の新幹線に乗って、12時過ぎに僕たちのホテルにやってきた。3時には起きて、準備しなければいけないというのに、こんな時間に到着したMaruのせいで僕は叩き起こされた。
すぐに睡眠体制に入ったのはいいが、なかなか寝付けない。僕の悪い癖がこんな大事な場面で出てしまった! いくら目を瞑っても、頭が冴えて全然寝れない。おまけに、Maruの歯ぎしりが気になって仕方がない。時計の針は1時、2時、3時といつの間にか移動していき、ほとんど一睡も出来ないまま、起床時間の3時になった。あ〜最悪。
僕の頭には最悪のシナリオが出来上がろうとしていた。寝不足のため、リタイア! それはただの悪夢で終わってくれるのか?
とにかく、嘆いている暇もない。急いで準備にかかった。筋肉をほぐすクリーム、日焼け止め、ワリセリン等々を体に塗りたくり、バナナとヨーグルトの朝食をとる。そして、水もたっぷり飲んだ。ウェアとシューズはレースのために用意したものだ。特にシューズはアシックスのサロマ100というウルトラマラソン専用シューズ。軽量で、クッション性が非常に高い優れものだ。
全ての準備は整った。問題は寝不足がどれだけ走りと体力に影響するかということだった。とにかく、走るしかない。後は根性だ。やるだけやってやろう! そんな気持ちだった。
ゴールで受け取る荷物をニューキャッスルホテルで預けて、スタート地点の福山城へ。
まだ、辺りは薄暗いが、福山城の前の広場に集まったランナー達は総勢約700名。中には、70歳ぐらいのおじさん、おばさん。中学生ぐらいの子供までいる。なんてやつらだ!僕達は驚きを隠せなかった。「負けたくない!」
バァ〜ン!! 午前5時、僕の人生最大の挑戦がゆっくりとスタートした。目指すは100キロ先にある愛媛県今治城だ。
|
|