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 4.Heart on fire
 仕方なかった。僕は1人で走ることを決めた。もう少し待てば、Maruは現れるかも知れない。でも、もし一緒に走ることになっても、彼が僕と同じスピードでは走れないことは明らかだった。僕は1人でゴールを目指し、走り始めた。仲が悪くても、2人だったらある程度励まし合い、競争心を煽り合いながら走ることが出来た。でも、1人はつらい。それからは本当に自分との戦いだった。

大三島橋を渡る
大三島橋を渡ると、5番目の島・伯方島へ
 急激に体力が消耗し、足が動かなくなり始めた。そして、激しい筋肉痛が足全体に走る。それでも、ゆっくりしたペースだったが、少しずつ前に進むことだけを考え、5キロ毎にあるエイドを目標に走った。大三島の海岸線沿いを走り、大見島橋を渡って、5番目の島・伯方島へ入る。なんとか70キロを過ぎ、71キロ地点のエイドを目指して走っていると、直線の彼方に大きな白いテントが見えた。

 「エイドだ!」

 しかし、それはただのエイドではなかった。規模が違うし、雰囲気も違う。村全体で応援してくれているって感じ。
 僕の前方を走っているランナーは、ゼッケン番号と出身地、名前がマイクで読み上げられ、「ゼッケン○○番、××からお越しの△△さん!! 頑張ってくださ〜い!」という感じで、大きな声援をもって迎えられている。まるでヒーローみたい。
 呼ばれたランナーも、当然の如く手を振って声援に応えていた。
 そしてついに僕の番へ。

 「ゼッケン506番、大阪府からお越しのヨシダケンイチさん!! 頑張ってください!!」

 体力的にもクタクタで、笑顔は作れなかったが、手だけは大きく振って声援に応えた。
 エイドにはいると、すぐさま冷たい濡れタオルとスポーツドリンクを手元に持ってきてくれてた。そして、ボランティアのトレーナーの女の子が丁寧に僕の足をマッサージしてくれた。そして別れ際に、こう言ってくれた。

 「あと30キロ頑張って、ゴールで会いましょう!!」

 「もちろん!! 絶対にゴールします。ありがとう!!」

 この時、僕の心の中に、どうしてもゴールしてみたいという強い気持ちが生まれた。
 これまでの人生で最大の挑戦(だと思う)「100キロマラソン」。もし100キロを人の人生に例えると、僕は今一番苦しい時期に立ち向かっているのかも知れなかった。そして、それを乗り越えることに、このチャレンジの意味がある。そんな気がした。

 レース前日に、Maruがメールでこう書いていた。
 「このマラソンはある人にとっては競技会であり、またある人にとってはイベントでしかないのかもしれない。しかし俺にとっては紛れも無く「死合」なのだ。」と。

 そして、その言葉は僕にも意味を同じくしていた。「死合」なのだと。
 太股、ふくらはぎ、足首、足の裏・・体のありとあらゆるところが悲鳴のような痛みを訴えていたが、僕の脳は体の各パーツと戦いながら、ゴールするまで走り続ける決断を下した。
 だって、「死合」なんだよ。
 「負けられないんだよ」
 
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