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 13.平和という名の街
 レバノンから再びヨルダンに再入国した僕たちは翌日、イスラエルに入国した。
 イスラエルとの国境地帯ヨルダン川西域をバスで渡る。和平交渉が進み、昨年イスラエルとヨルダンとの間に戦争状態終了宣言が出され、それまでのピリピリした状態ではなくなったというが、国境の警備は厳重で、平和という状態ではないように思えた。よくニュースで耳にしたヨルダン川は、水の枯れた小さな河跡に過ぎなかった。
 聖地エルサレムに入ると、所々に銃を持った若い兵士が警備をしていた。それまでのアラブ人ではなく、西洋人的な顔立ち。たぶんクリスチャン系かユダヤ系のやつだろう。そして、街は様々な人種・宗教の人で溢れていた。
 エルサレム。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、3つの宗教の聖地である。平和を意味するこの宗教都市では、紛争が絶えず、中東戦争とはこの地を巡る戦争といっても過言ではないかもしれない。歴史を感じさせる町並み
 僕たちはとりあえず、腹こしらえのためにロンプラに載っていたピザ屋に向かった。ここのピザは最高に美味かった。殆ど観光客の来ないだろう小さな素朴な店、ちゃんとした椅子さえない。しかし、ピザ生地にプロセスチーズを潰してサラミを載せただけの簡単なものなのに、蒔き釜で焼かれた手作りピザは何とも美味しかった。店の主人に
 「このガイドブックを見て来たんだよ」と言うと、知らなかったらしく、ビックリしながらも喜んでいた。だって、ロンプラはNO1ガイドブックだからね。それから、旧市街にあるバックパッカー御用達の私設ユースホテルに宿をとった。うるさいアメリカ人客ばかりであまり好きになれない雰囲気だったが、それなりに情報も得ることが出来るだろうとここに決めた。
 エルサレムの旧市街は、周りを大きな城壁で囲まれている。その内部はクリスチャン地区・ユダヤ人地区・ムスリム(アラブ)地区・アルメニア人地区の4つのエリアに分かれていて、エリアが違うと、その雰囲気も人種も異なる。エキゾチックという言葉がピッタリの街だ。
 ホテルに荷物を置き、まず僕たちが向かったのは、エルサレムのシンボルとも言うべき「岩のドーム」。石畳の細い回廊を抜けると、黄金の屋根を持つ立派なドームが現れる。ドームの壁はブルーを基調としたモザイクで飾られており、建物を一周するようにコーランが描かれている。この美的センスには驚かされる。今まで見たモスクとは違った美しさだ。この内部にある黄金の岩からマホメットが昇天したとされている。
 街の高台に位置するドームはその四方を堅固な城壁で守られている。この西側の城壁が「嘆きの壁」と言われるユダヤ教の聖地なのである。その昔、この高台にはユダヤ教の神殿があったのだ。戦いに敗れたユダヤ教は神殿を潰され、その城壁だけが「嘆きの壁」として残った。宗教闘争。エルサレムを征したものだけが、この高台にその宗教の神殿を建てることが出来る。言わば、エルサレムという街は、この地をめぐって争われていたといえるのだ。
素晴らしい美しさ!岩のドーム  近年、中東の和平交渉が進み、徐々にこの地にも平和が訪れようとしているのだろう。でも、日本人の僕には平和であると感じることが出来なかった。街には銃を持った兵士が溢れているし、民族間、宗教間のいざこざも絶え間ないように思えた。ベイルートで戦争の跡を見てから僕の平和に対する思いは、それまでとは違っていた。少しでも早く本当の平和を迎えてほしいと本当に思った。
 平和という名の街エルサレム。昔の人も平和を願ってこの地にこの名を付けたのだろう。僕は黄金ドームでこの町の平和を祈った。
 " Peace for Jerusalem ! "
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