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 11.Meet again! -Nepal Trek 1998-
 目が覚めると、時計の針は朝の10時を過ぎていた。充分すぎる睡眠だった。お陰で、まだ微熱はあるようだが、昨日に比べると、かなり体は楽になっていた。まだ本調子じゃないが、何とか動けると確信した。カトマンドゥを散策するに当たり、まず最初に思い浮かんだことは、昨日バスの隣の席に座っていた兄ちゃんに、助けてもらったお礼を言いに行くことだった。
 タメル地区の中心に位置するカトマンドゥ・ゲストハウスのしゃれたオープン・カフェでパンとコーヒーの軽い食事を済ませ(少し高いけど、ゆったりとした雰囲気が好き。)、彼の経営する店へと足を運んだ。タメルから歩いて5分ほど、8畳ほどの店内には、置物や壁掛けなど観光客向けの土産の品々が数多く並べられてあった。店内には、昨日の彼が店番をしていた。
 「ナマステ! 昨日助けてもらった日本人です。」ちょっと変な挨拶だった。
 彼も笑顔で、
 「おお、よく来てくれたね。もう体の方はよくなったみたいだね・・」
 彼に助けてもらったことに礼を言うと、彼は恩をきせる様子もなく、
 「そんなことはネパールでは当たり前のことだから・・同じアジア人なんだから、助けるのは当然さ。君が無事で本当によかったよ。あのルートはカーブの連続だからね。」
 無精ひげをはやしたその風貌からは、ちょっと予想できないほど爽やかな好青年だった。僕はお礼に数点の土産物を買い、彼と別れた。彼は最後まで僕を特別視することなく、おまけまでつけて、安くしてくれた。パタンの町
 カトマンドゥ王宮などの観光名称を回り終えた僕は、バスに乗って古都パタンへと向かった。パタンは日本で言えば、京都のような上品で歴史のある美しい町だった。規模的にはカトマンドゥのそれとさして変わらないのだが、こっちの方がかなり気に入った。赤茶色の美しい屋根、芸術的な仏像や彫刻、京都や奈良と変わらない雰囲気にとても親しみを感じた。
 ホテルに戻ると、店主が「お前のガイドが訪ねてきたぞ」と言って来た。「また来るそうだ。」
 クルだ。やっと戻ってきたのか・・ しばらく部屋で寝転んでいると、誰かがドアをノックした。扉を開けると、そこには僕のガイド・クルが居た。3日ぶりの再開。もしかしたら、もう会えないかもしれないと思っていた。今朝の飛行機でポカラに戻り、バスでカトマンドゥへ直行してきたらしい。それにしても、嬉しかった。
 一緒に近くの日本料理屋に行き、「トレッキング打ち上げ」&「最後の晩餐会」を行った。まだ胃の調子が悪かった僕は雑炊を、クルは唐揚定食を注文した。日本食初体験のクルは、初めて食べる唐揚に舌鼓を打っていた。やっぱり日本食は美味い。
 「次はエベレストだ、ケンイチ!」とクルが僕に言ってくる。
 「そうだな、エベレストか、是非行ってみたい。その時は、またガイド頼むよ。クル」
 この旅の中で、僕とクルとは単なる客とガイドの域を越えた間柄になっていた。同じ目的地を目指した同世代の若者・・・純粋で、やさしい。僕はクルのことをずっと忘れないだろう。
 「明日、空港まで見送りに行くよ」とクルが言ってくれたが、断った。僕はそういう種のやつがめっぽう苦手なもので・・。それで、その日に彼とは別れた。
 こうして、僕のネパール旅行は終わった。思っていた以上に自然は雄大で厳しかった。しかし、その厳しさに反発するかのように、ネパール人はやさしかった。
 また来たいと心から思った。次に来るときはエベレストだな・・
  

(完)

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