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 17.Maruは2度落ちる -失われた魂を求めて-
 T2に差しかかるや否や、波が来て気がつけば川の中。今回も転覆かあるいはラッセン以外振り落とされたんだ、と思った。しかし浮かび上がって見ると落ちたのは俺一人。黒島さんに至っては俺が落ちたことすら気がつかなかったという。まるで神隠しのように消えていたそうだ。ザンベジ川の女神に惚れられた、ってことかな。男前は辛い。
 その後は結構キツい急流もあったが要領もわかってきて、やばくなる前にかがみ込む姿勢をとったりでなんとか全てクリアー。最後に川辺からトラックの待っている丘の上までごっつい山登りをさせられて死にそうになったが、登りきった後はビール、ジュース飲み放題! ラッセンと写真をとったりみんなで健闘をたたえあったり・・・ようやく達成感がこみあげてきた。・・・やったぜ!
ビクトリアの滝は確かに凄い。しかしこのラフティングをしないまま帰っていたら、ザンベジ川の魅力の半分も知らないまま俺は帰国後こう言っていただろう。「ビクトリア、よかったよ。」
しかし今ならこう言う。
「旅行とワイルドなことが好きなら、絶対に行け!女房を質に入れてでも行け!」
 帰りのトラックでは延々とビールが振舞われた。飲んでも飲んでも、回ってくるのだ。旅行会社のスタッフと別のボートに乗っていた人達(欧米人)と同乗していたのだが、同じ試練をくぐった仲間としての連帯感みたいなのが生まれていて、「このビール飲まないと帰さないぞ。」みたいなことを言うもんだから飲まないわけにいかない。
 そんな時、ふと外の風景に目をやると・・・ちょうど村のそばを通っていたのだが、家はどれも土壁にワラブキ屋根。近代的なビクトリアの町並みとは大違いだ。そして子供達がトラックを見て「アイシー、アイシー」と叫んでいる。何のことかな、と思ったその瞬間トラックの旅行会社の人がクーラーボックスから余った氷をポイ、と投げた。その氷を奪い合う子供達。そう、ここの子供達は土まみれになった氷を拭いて、なめるのがごちそうなのだ。ただの氷も滅多に手に入れられない生活、それがここの現実なのだ。
 トラックからは次々と氷が投げられ子供達はそれに群がる。しかしその光景をみるのは締めつけられる思いだった。途中“ザンビアの4分の1の土地を持っている大地主”の家の前を通ったが全然たいしたことなかった。能勢の島田紳助邸の方がよっぽどでかい。今まで途上国はいくつか旅してきたが、このザンビアのようなところは知らなかった。これもまた、忘れられない思い出だ。
トラックは国境を超え、ビクトリアへ戻りそれぞれをホテルのもよりのポイントで降ろしていく。自然とみんな降りるとき、全員と握手を交わしていく習慣ができあがっていた。別のボートの人達は上級者で本当にうまく、彼らからみれば俺達なんて「川をおちょくっているのか、ラフティングをなめているのか!」というレベルに違いない。しかし、一人としてそんな態度はみせず、同じ試練を超えた勇者として俺達を認めてくれ、熱い握手を交わしていった。
「ナイスファイト、また会おうぜ!」
 何事も一生懸命やれば、人はわかってくれるのかもしれない。ビクトリアで一日だけ会ったナイスガイ達、しかし奴らもまた命知らずの冒険野郎たちなのだろう。きっと長生きできない奴らだ。最後の一人と握手を交わし、うしろ姿に向かって俺はこうつぶやいた。
 "See you in hell (Don't be late)."
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